被災家屋の調査

4月12日、15日と栃木県東部の町へ家屋被害調査(判定)に出向いてきました。

1日かけ、調査できるのは6~7件程度、応急危険度判定は一通り終了し、次の段階である「被害認定」を判定する為です。
半壊未満、半壊、大規模半壊、全壊…などと分けられており、それぞれ「建物の傾き、基礎の割れ、外壁のひび割れ(剥落)、屋根の破損状況」などをはじめ、総合的に点数評価します。

一般的な木造在来工法の建築物をはじめ、木造2×4、鉄筋コンクリート造、そしてそれらあらゆる年代の住宅を拝見しました。

グランドに積まれた大谷石
グランドに積まれた大谷石(満開の桜が悲しそう)

■被害の特徴■

【敷地・地盤の被害状況】
土留が組積造で構造検討されて無く、低い土地側に崩落した。
ヨウ壁が構造検討されているとは考えにくく、丘陵地に作られた住宅が傾く。
敷地に地割れが起き、建物は被害が少ないが家屋が傾く。

大谷石塀・大谷石蔵の被害状況】
被害が無い大谷石塀・大谷石蔵を探す方が難しい。
(こちらの地域は、1階が大谷石の組積造、2階が木造という特殊な構造方法を採用しておりました。以前、この地域は大火に見舞われ、多くの住宅を焼いたらしく、大谷石の家は燃えにくいという見解から、この特殊な構造の住宅が広まったようです。その構造方法がアダとなり、被害をうけていました。)

大谷石蔵
下部の大谷石に木造が載った構造、木造部との筋結がなく、中間層がぬけ落ちる

【年代別被害状況】
一口に…新しいから良く、古いから悪いなどという単純な結果にならなかった。
(40年も経った住宅でほぼ無傷だったり…新築数年の方が外壁が落ちたりと被害が大きかったり)

【工法別被害状況】
多くのデータを統計したわけではないので、多少偏りがあるかもしれませんが、ここでは被害特徴の報告にとどめます。

①木造在来工法
  建屋の年代による、建物被害に一貫性が無かった。
 (古いから被害が多いという訳で無い、構造検討の有無や施工方法に依存するのか?)
②木造2x4 
  外壁に損傷が出にくい。
  しかし、建屋内部の壁面ひび割れクロス損傷が在来工法に比べ大きかった。
③RC造
  調査は1件のみ、築35年程であっても構造体は損傷がほぼない。
  非構造ブロック部のモルタル仕上げ損傷が甚大。

【部位別損傷】
屋根:棟瓦の損傷は殆どの建物、平瓦は棟瓦が破損し落下によって被害が大きくなっている状況
外壁:モルタル下地はクラック、窯業系サイディングは目地部からのクラック&構造部からの剥離、概ねALC壁の損傷が少なめ
基礎:通気部のクラックは多数、他の部分は大きなクラックは稀
犬走:基礎部から外れ、基礎立上りモルタル仕上部への損傷拡大要因傾向
増築:新旧部エキスパンジョイントが無く、外壁破断例あり

大谷石塀1 ブロック+よう壁
左:控壁があるが、基礎と大谷石の筋結がされていない 
右:よう壁上のブロックが倒壊、筋結なしよう壁傾き地割れ、建屋傾く

基礎部大谷石 被害小古い邸宅
左:倉庫の基礎部
右:築30~40年でも健全な建屋


●まとめ●
①内外に損傷がみられても、人命を守ることができた木造住宅の優秀さを確認。
②組積造(石蔵や石塀)の耐震性能の改善点・問題点が表面化した。
③基礎の損傷(クラック等)による建屋本体への影響の少なさ。
④瓦屋根の損傷率に、建物構造種別差が無かった。そして軽い屋根の建物損傷が少なかった。
⑤造成地や盛土地盤が建屋本体に及ぼす影響が大きく見られた。

以上を拝見し、私の寸評ですが・・・
建物が被害を受け、修復し使用する際のコスト的なことを考えると。瓦や外壁の損傷ならまだ復旧しやすく、継続利用に大きな影響は出ないでしょう。
そんな中、一番重要とされるのは「敷地地盤」の良し悪しと考えられます。
建屋本体をシッカリと構造検討した建屋でも、よう壁(土留)の傾きにより建物が歪んだり、傾いてしまっております。地割れし、地盤が落ち、敷地が流れています。建物が載ったこの敷地を修復することは難しいでしょう。
また建物以外で、組積造の門や塀は、鉄筋量が少なすぎたり、鉄筋が基礎に定着されていません。

これらの被害を最小限にとどめるには、よう壁や土留、組積造の門や塀の耐震性能を確保した構造に設計し、施工することの大切さが、露点したように感じました。
そして、落ちない棟瓦の仕様を考えるだけで、被害はカナリ少なくなったはずです。
土地も地盤調査をし、改善すべき土地ならば地盤改良をすることは言うまでもありません。

もっと何十枚にも及ぶ詳細な被害状況報告が出てくるでしょうが、実際に私が見て感じて危険と判断したり、問題ないと感じた見解を含めまとめてみました。
建物を作る以前の問題で、土地の造成をする不動産業界にもこの被災状況を教訓にしてもらいたい。
そして、土地を購入する建主様も一級建築士をはじめとする有識者に土地探しから相談するなど、表面的な事ばかりではなく、「最も重要な要素が何であるか」を十分理解してもらいたいものです。



4月25日追記
大谷石塀施工方法
株式会社テイクス設計事務所様 HP内記事
こちらへ →トータルカット大谷石塀の正しい施工方法参照

大谷石塀の被害に対する声明
↑↑↑↑↑↑
足利工業大学和田昇三教授による大谷石塀の被災調査資料と、研究会の声明がダウンロード先


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コメント

松村秀治

 
 お疲れ様です。
 今日の連絡ありがとうございました。

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実際 現地に行き、現場の空気を感じると
より一層、深刻な問題と感じます。

私どもも震災後、北関東圏および千葉の液状化地域にて
地盤調査および家屋の沈下レベル測定 などの業務を
行って参りましたが、家主様の「苦痛の叫び」のような声を
多く耳にしています。

また、これより多くの既存家屋に対し、
≪家屋の傾き修正対策≫の工事に着手して参ります。

居住者の気持ちを考えれば、早期に「傾きレベルの改善」および「地震が来ても大丈夫な地盤創り」のお手伝いを進めて参りたいと思っています。

そして、4/27~ (実動期間40日間)の予定で
宮城県に行ってきます。

現地確認・現況測量・地盤調査・杭工事を目的としています。

少しでも復興のお役に立てれば…

-----
地盤調査・地盤補強対策の大切さが、ここに来て少しずつ理解されてきたのでは! と感じております。
地震対策に平行して【適切な地盤対策】が、全ての建物に施される事を祈ります。

Gaku

宮城県入り
GWなんて吹っ飛んでしまいましたね。
宮城県入り、大変ご苦労様です。
御社の利点を復興に活かしてのご活躍、遠いところから応援しております。思う存分張り切ってきてくださいね・・・。

そして、そのご報告お待ちしております。
是非、お勉強させて下さい。
一まわりも二まわりも大きくなった松村君に会える日を楽しみにしております。
それまで、JazzNightは、おあずけですね。
お体に気をつけて。
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プロフィール

Gaku

岳設計工房 代表 関口岳志です


-受賞暦-

第5回 佐野市水と緑と万葉のまち景観賞
岳設計工房

第2回 佐野市水と緑と万葉のまち景観賞
Tree Re-hair

第2回 さのし建築景観賞
Natural Healing 「凛」

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